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2012/01/30

石巻の動物救護活動

土曜日に、石垣市で、石巻「あべ動物病院」の院長さんを招いての
「東日本大震災における石巻の動物救護活動」という講演会がありました。

その日と翌日はカンムリワシ関連イベントが続いて、
よりによって、ってぐらい忙しい週末だったので、
夜の講演会は、途中で帰ろうかな、と思っていました。
しかし、あまりにも貴重で、深刻で、感動的で、意義深いお話が続いたので
とても途中で席を立つことなどできず、最後まで拝聴しました。

貴重なお話をここでまとめておきたいと思います。

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宮城県石巻は震度6強の揺れと、その後の大津波で、すべてのライフラインが絶たれ、市街地の73%が浸水し、壊滅状態となりました。
海岸線から6km離れたあべ病院も1階は浸水し、入院動物をすべて2階に移動して10日間そのまま。
フードはあったものの、水の確保が難しかった。
水が引くまで1週間、その後もヘドロが道路を覆い、散歩もできない状態が続き、
大型犬はベランダで排泄させました。

石巻ではすべての港が水没。
1m前後地盤沈下。
震災による死者の1/3が石巻地区。

そんな甚大な被害を受けた石巻地区ですが
ペット犬の被災(死亡または移転)は3割程度。

幸い、石巻ではすべての避難所で動物との同行避難が認められたため
獣医さん達は、避難所を巡回して、聞き取り・無料診療などをされました。

同行避難所で大切なのは、

*ペット連れの人達と、そうじゃない人達を別々にすること。お互い気兼ねが減る。
*ペットのしつけができていること。

印象的だったのは、ペットといっしょの避難者の部屋には笑いがあるけど、人だけの部屋では皆さん沈みがちになること、だったそうです。
やはり動物には癒し効果があるのを実感されたとか。
中には「着るものも何一つ持ち出せなかった。私にはこの子だけ」と犬を抱いてにっこりされた人もいらっしゃったそうです。
また、あるご夫婦と黒ラブ1匹が、津波に巻き込まれたにも関わらず、奇跡的にそれぞれ助かって、翌日に再会。
三日間、どこへも行けず、救助もなく、流れてくる食べられそうなもの(未開封のポテチとか)を「全部3人でわけて食べました」と話されている動画もありました。
やはりTVを通してでなく、実際に被災者のかたのお話をうかがうのは全然違いました。

一次避難所はすべて同行避難が可能だったものの
二次避難所は動物不可が多く、仮設住宅入居までの間、動物を預かる施設が必要になりました。

石巻獣医師会は「石巻で育った動物達は石巻で命を繋いでいく」をコンセプトに、石巻動物救護センターを開設されました。

10月までの半年間、多くのボランティアさんの力を借りて
多くの企業協賛の援助を受けながら、センターは運営されました。
(既に役割を終え閉鎖されました)

100頭以上の犬・猫を預かりました。
石巻は飼い主さんが、放棄することは少なく、70%がまた飼い主さんの元に戻れたそうです。

今回の経験から、被災前(平常時)に飼い主がしておくべき準備は

*基本的しつけ・社会化(トイレ、クレートトレーニングなど)

*狂犬病及びレプトスピラが入っているワクチン接種
(津波の後など、ネズミが家の中にも入ってきたりするため)

*避妊去勢をしておく。

*マイクロチップ(迷子札は無くなってしまう)

*地域で同行避難ができるかどうか確認しておく

*動物用非常持ち出し袋を用意しておく。

非常用持ち出し袋に入れるべきもの

*フード  *水  *ペットシーツ、おむつ  *器
*クレート (私はこれに、タオル・ビニール袋を足します)

地震・津波後はクギやガラスなど瓦礫が散乱しているため
動物は足などに怪我します。
そのため、人間が外出する時に、犬を連れて行けないことが多く、そのため避難所でクレートに入って留守番できると助かるそうです。

多くの愛護団体が、犬猫を助けるために現地で活動していましたが
どこへ連れて行かれたかわからないこともあり
保護する場合は、どこでどんな動物を保護したかの資料を、請求があれば提出してほしい。
もちろん、ちゃんとしていた団体が多いのですが
何度頼んでも、まったくデータを出さなかった団体がある、と保護団体への苦言も呈しておられました。
そういう問題が、現在も続く福島での保護活動に影を投げかけているのですね。

10月にセンターを閉鎖してからは、仮設住宅の約1割にいる動物の
医療・しつけなどの支援を引き続き行っているそうです。

 

阿部先生による、ペットと共に生き抜くために必要なこと。

*家族の一員であるという認識。
*同行避難がベスト(室内避難)=避難所がペット入室可
*仮設住宅が条件(種類とか大きさとか)なしでペット可であること。
*仮設住宅に住む動物への支援があること。

コンセプト「その土地で育った動物が家族とともに生きる!」

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講演の最後に

「私はこれだけは伝えたいと思って石垣島に来ました。
(津波の時は)とにかく逃げてください。高台へ逃げてください。」

沿岸部にほとんどの公共施設や住宅などが密集しているところが
石巻と石垣は似ているそうです。(字面も似ている!)

石垣でも電柱に海抜○mとつけたりしてますが、
ほとんどの基幹施設が低い所に集まっているのは、そう簡単に解決できません。
自分達は市街地から遠く、やはり海に近いところに住んでいます。
だから、より救援は届きにくい可能性が高い。
自助努力というか、自分でどこまで準備できるかにかかっていると思っています。

離島だから、いざとなると孤立しちゃいますからね。

 

翌日の地元新聞には、この講演会が
「動物を心の支えに」「同行避難がベスト」などの見出しをつけて、
大きく掲載されました。(その記事

この講演会自体にも行政関係者も出席していたので
ぜひ石垣市で、そして日本全国で、同行避難の方針をたて、
そのための対策などを決めてもらえたら、と願います。

 

 

よそのブログの関連記事をご紹介します。
原発避難地域に取り残された動物達のことが海外でどう報道されているか。

動物と人間を一緒に救出する方法があったはずなのに

 

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コメント

おはようございます♪

講演会の貴重な内容をまとめてくださりありがとうございます!
当日私たちは残念ながら他の予定と重なってしまい、後ろの方でビデオだけ設置させていただいてたんですが、なんと録画に失敗(>_<)

資料や毎日新聞も目を通しましたが、こちらが一番よく理解できました。

同行避難ができ、いつも笑いがあるって素晴らしいですね!

投稿: ayapani | 2012/01/31 07:18

>ayapaniさん
ビデオ残念でした。見せていただこうと思っていたのに。。。
いろいろなことがすっきりわかった気がしました。
私達が住むような村では、同行しても文句言われなさそうですが(笑)、備えあれば憂いなしとなればいいのですが。


投稿: 藍mi-goro | 2012/01/31 19:57

全国の自治体主催でこのような講演会を開催してもらいたいです!

投稿: イヌ犬 | 2012/02/01 23:19

>イヌ犬さん
本当にそうですね。
石垣では獣医師会の主催でしたが、全国でやってほしいです。

投稿: 藍mi-goro | 2012/02/03 16:34

この記事へのコメントは終了しました。

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